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コラムとニュース columns and news

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認知症センター便り

<オレンジカフェ> 振り返り No.62

2026年3月27日実施

こんにちは。オレンジカフェスタッフです。
2025年度第12回目のオレンジカフェを、会場とオンライン(Zoom)で開催しました。
先月に引き続き、当日のお話から、参加できなかった皆さまへ内容をご紹介します。
認知症研究とタイプの変遷
 久山町研究を起点に、日本の認知症研究の動向が紹介されました。この長期疫学研究により、心筋梗塞や脳卒中といった生活習慣病の予防医療が進んだ結果、かつて主流であった「脳血管性認知症」は減少し、現在では「アルツハイマー型認知症」が多数を占めるようになっています。
 また、2017年頃からは認知症の発症「率」は低下傾向にあるものの、高齢化の影響により患者の絶対「数」は増加しています。さらに、過去の統計には「年のせい」とされていた未診断のケースが含まれていない可能性も指摘されました。

☕診断の告知と受容
医師が本人に認知症の診断を伝える方法について、多角的な議論が行われました。

告知方法の模索
 医師は、患者や家族の様子に配慮しながら、「アルツハイマーのパターンです」といった婉曲的な表現を用いることがあります。しかし、それだけでは十分に伝わらない場合もあり、状況に応じてより具体的に説明する必要があるとされています。

当事者・家族の意見
 当事者や家族からは、「はっきり伝えてもらった方が、その後の治療や生活設計(リビングウィルなど)を考えやすい」という意見が多く聞かれました。また、診断によってこれまでの不調の原因が分かり、「すっきりした」と感じるケースもあります。

社会的背景と課題
約40年前には、家族が受診させず自宅に閉じ込めるような事例もありました。現在でも「年のせい」と受け止めたい家族や、本人への影響を心配して告知を避けたいと考えるケースがあります。早期診断の重要性が広く知られる一方で、こうした心理的な壁への対応が課題となっています。

☕受診勧奨と支援アプローチ
認知症が疑われる方への関わり方については、関係性に応じた段階的なアプローチが有効とされています。

本人への働きかけ
「病院へ行こう」と直接伝えると抵抗感を招くことがあります。そのため、「一緒に物忘れチェックに行かないか」と誘ったり、「原因によっては治療できる可能性もある」と伝えるなど、受診へのハードルを下げる工夫が共有されました。特に若年性認知症は進行が早い場合もあり、適切なタイミングでの関わりが重要です。

介護者への配慮
介護者(特に男性)は支援を求めにくい傾向があるため、「何かお手伝いできることはありますか」と寄り添いながら声をかけ、相談しやすい関係づくりが大切とされています。

受診拒否への対応
本人が受診を強く拒否するケースも多く、無理に進めるのではなく、継続的に関わり続けることの重要性が確認されました。

☕入院時の課題
入院による環境の変化は、認知機能の低下につながることがあります。一方で、リハビリテーションや医療スタッフとの関わりによって状態が改善する場合もあります。
病院ごとに対応は異なるため、事前の情報収集や家族の付き添い、外部サービスの活用が重要なポイントとなります。

☕地域活動と社会の理解
認知症の人が安心して暮らせる地域づくりには、医療機関の支援と地域住民の協力が欠かせません。

地域での取り組み
マンションの交流会や地域カフェ、オレンジリング(認知症サポーター養成講座)などを通じて、理解を深める活動が進められています。一方で、活動場所の確保が課題となることもあります。

新しい認知症観
早期診断は「早期絶望」ではなく、「支援のスタート」と捉える考え方が広がっています。認知症を特別なものとせず、誰もが共に暮らせる社会をつくる視点が重要です。

社会参加と就労支援
当事者の方の意欲は高いものの、活躍の場はまだ十分ではありません。小平市のボランティアポイント制度のような取り組みや、当事者の方のスキルと企業を結びつけるような仕組みづくりが提案されました。

☕認知症告知とACP(アドバンス・ケア・プランニング:将来の医療やケアについて、本人・家族・医療者があらかじめ話し合っておくこと)への影響
診断をきっかけに、本人が主体的に行動するケースが報告されました。

前向きな変化
告知後にデイサービスや趣味活動に積極的になったり、自ら治療法を調べて治療を受けたり、旅行を計画するなど、前向きな行動につながる例が紹介されました。また、40代で診断を受けた方からは、仕事の整理など早期に対応できたという声もありました。

ACPの課題
診断がすぐに財産管理や延命治療などの具体的なACPにつながるケースは、まだ少ないのが現状です。診断直後に将来のすべてを伝えることは本人の負担が大きく、伝えるタイミングや内容の工夫が求められます。
また、家族が良かれと思って本人の意思を後回しにしてしまう「本人置いてけぼり」のリスクも指摘されました。支援者には、本人の希望を一緒に整理し、それを実現できるように支える役割が求められます。

☕今後の予定
市民公開講座
2026年10月3日(土)に、アルツハイマーデー関連の市民公開講座を開催予定です。


認知症センター/認知症疾患医療センター