てんかんを知る コラム&ニュース
<コラム>第41回 「自分のてんかん、どう伝える?」
今回は、「てんかんを伝えること」について考えてみたいと思います。
私たちは「この時期いつも頭痛が起きるんだよね」「視力が悪くてコンタクトなしでは一歩も外に出られないよ」などなど、自分の体質や症状について、何気なく口にしています。

でも、こと、てんかんについてはどうでしょうか? 口にするのをためらわれる方もいるかもしれません。てんかんがあることを周りの人に知られると、何かをさせてもらえなくなったり、仲良くしていた人が離れてしまったりして、自分の生活の一部(あるいは全て?)が失われてしまうのではないか。そのような恐れを抱いている人は決して少なくないようです。また、実際にそのような喪失によって深く傷ついた経験から、何かを始めることや人との接触に慎重になっている方もおられるでしょう。
一方で、特に発作が十分に抑制されていない間などは、いつどこで発作が起きるか予測がつかないため、身近な人にてんかんがあることを知っておいてもらうと安心という側面もあります。
では、いったい誰に何をどこまで伝えたらいいのでしょう?
AさんとBさんの例を見てみましょう。
●Aさんは20代の女性です。発作は薬でほとんど抑えられていますが、年に1~2回程度、一時的に身体の動きが止まってしまう時があります。Aさんは最近知り合って仲良くしている友人と、近々一緒に旅行に行く計画を立てています。友人にはてんかんのことを伝えていません。「薬を飲んでいることを伝えておいた方がいいかな」「万が一発作が起きないとも限らないし」と思いながらも、「変に心配されて旅行を断られてしまったら…?」「関係自体が悪くなってしまうかも…」といった考えも浮かんできて、なかなか言い出せずにいます。

●Bさんは40代の男性で、今の職場は勤め始めて20年になります。数年前、突然意識を失って倒れてしまい、病院でてんかんと診断されました。直属の上司に相談し、その後も通院しながら勤務を続けてきました。しかし昨年の人事異動で上司が変わり、てんかんのことは伝えないまま、かれこれ半年が経とうとしています。以前の上司のようになんでも話せる雰囲気ではなく、なんだか委縮してしまい、「このまま言わずにいようかな…」「いやいや知っておいてもらった方が休みの相談もしやすいし…」と、日々悶々としています。


てんかんには様々な種類があり、起きる頻度も治療の手段も必要な配慮も、人によって異なります。
まずは自分のてんかんを知るところから始めましょう。
その上で、下記のようなことが伝えられると良いでしょう。
① どんな発作を起こす可能性があるか
例:「一瞬意識がなくなって、全部の動きが止まることがある」「首がぐーっと横に動く」など
② 発作時にしてほしいこと
例:「びっくりするかもしれないけど、基本的には見守ってもらうだけで大丈夫」「ここに書いてある病院に連絡をしてもらいたい」など
③ 治療方針や予後
例:「薬を飲んでいればほとんど起きない」「手術をするかもしれない」「後遺症が残ったり、命に関わったりすることはない」など
こうした事を伝えて得られるメリットは、「不当な制限を受けにくくなり、偏見や誤解を減らし、安心した生活を送りやすくなること」です。
上記に加えて④発作の要因や仕組み(*)なども伝えられると、人によっては更に安心かもしれません。(*)「脳内で起きる電気的な問題であり、一時的なもの」など

ここまで、伝えることの良い面と伝え方の例を述べてきました。
「理屈としては分かるけど、なかなか一歩を踏み出せないよ」「そうは言ってもやっぱりリスクだってあるのでは?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。実際、「伝えない」という選択があなたを守ってくれることもありえます。それは相手との関係性、あなたが属する集団の規模やルール、その中での立場や役割、あなたにとっての望ましい在り方など、様々な要因によって変わってくるのだろうと思います。複数の視点から、誰に伝えるか(あるいは伝えないか)を検討してみましょう。
誰に何をどんな風に伝えたら良いか、困ったり迷ったり、葛藤をひとりで抱えきれなくなったときは、専門家に相談してみるのも一つの方法です。その小さな勇気が紡ぐやりとりの先に、あなたにとって安心して自分らしくいられる環境が広がっていくかもしれません。

参考文献
『「てんかん」のことがよくわかる本』中里信和監修 講談社
『MOSESワークブック てんかん学習プログラム』MOSES企画委員会監修
『新てんかんテキスト-てんかんと向き合うための本-』井上有史・池田仁 南江堂
>総合てんかんセンター
>臨床心理部
私たちは「この時期いつも頭痛が起きるんだよね」「視力が悪くてコンタクトなしでは一歩も外に出られないよ」などなど、自分の体質や症状について、何気なく口にしています。

でも、こと、てんかんについてはどうでしょうか? 口にするのをためらわれる方もいるかもしれません。てんかんがあることを周りの人に知られると、何かをさせてもらえなくなったり、仲良くしていた人が離れてしまったりして、自分の生活の一部(あるいは全て?)が失われてしまうのではないか。そのような恐れを抱いている人は決して少なくないようです。また、実際にそのような喪失によって深く傷ついた経験から、何かを始めることや人との接触に慎重になっている方もおられるでしょう。
一方で、特に発作が十分に抑制されていない間などは、いつどこで発作が起きるか予測がつかないため、身近な人にてんかんがあることを知っておいてもらうと安心という側面もあります。
では、いったい誰に何をどこまで伝えたらいいのでしょう?
AさんとBさんの例を見てみましょう。
●Aさんは20代の女性です。発作は薬でほとんど抑えられていますが、年に1~2回程度、一時的に身体の動きが止まってしまう時があります。Aさんは最近知り合って仲良くしている友人と、近々一緒に旅行に行く計画を立てています。友人にはてんかんのことを伝えていません。「薬を飲んでいることを伝えておいた方がいいかな」「万が一発作が起きないとも限らないし」と思いながらも、「変に心配されて旅行を断られてしまったら…?」「関係自体が悪くなってしまうかも…」といった考えも浮かんできて、なかなか言い出せずにいます。

●Bさんは40代の男性で、今の職場は勤め始めて20年になります。数年前、突然意識を失って倒れてしまい、病院でてんかんと診断されました。直属の上司に相談し、その後も通院しながら勤務を続けてきました。しかし昨年の人事異動で上司が変わり、てんかんのことは伝えないまま、かれこれ半年が経とうとしています。以前の上司のようになんでも話せる雰囲気ではなく、なんだか委縮してしまい、「このまま言わずにいようかな…」「いやいや知っておいてもらった方が休みの相談もしやすいし…」と、日々悶々としています。

てんかんには様々な種類があり、起きる頻度も治療の手段も必要な配慮も、人によって異なります。
まずは自分のてんかんを知るところから始めましょう。
その上で、下記のようなことが伝えられると良いでしょう。
① どんな発作を起こす可能性があるか
例:「一瞬意識がなくなって、全部の動きが止まることがある」「首がぐーっと横に動く」など
② 発作時にしてほしいこと
例:「びっくりするかもしれないけど、基本的には見守ってもらうだけで大丈夫」「ここに書いてある病院に連絡をしてもらいたい」など
③ 治療方針や予後
例:「薬を飲んでいればほとんど起きない」「手術をするかもしれない」「後遺症が残ったり、命に関わったりすることはない」など
こうした事を伝えて得られるメリットは、「不当な制限を受けにくくなり、偏見や誤解を減らし、安心した生活を送りやすくなること」です。
上記に加えて④発作の要因や仕組み(*)なども伝えられると、人によっては更に安心かもしれません。(*)「脳内で起きる電気的な問題であり、一時的なもの」など

ここまで、伝えることの良い面と伝え方の例を述べてきました。
「理屈としては分かるけど、なかなか一歩を踏み出せないよ」「そうは言ってもやっぱりリスクだってあるのでは?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。実際、「伝えない」という選択があなたを守ってくれることもありえます。それは相手との関係性、あなたが属する集団の規模やルール、その中での立場や役割、あなたにとっての望ましい在り方など、様々な要因によって変わってくるのだろうと思います。複数の視点から、誰に伝えるか(あるいは伝えないか)を検討してみましょう。
誰に何をどんな風に伝えたら良いか、困ったり迷ったり、葛藤をひとりで抱えきれなくなったときは、専門家に相談してみるのも一つの方法です。その小さな勇気が紡ぐやりとりの先に、あなたにとって安心して自分らしくいられる環境が広がっていくかもしれません。
文責:心理療法士 梅垣

参考文献
『「てんかん」のことがよくわかる本』中里信和監修 講談社
『MOSESワークブック てんかん学習プログラム』MOSES企画委員会監修
『新てんかんテキスト-てんかんと向き合うための本-』井上有史・池田仁 南江堂
>総合てんかんセンター
>臨床心理部