臨床心理部コラム
「先延ばし」をやめるヒント
なかなかやることに取り掛かれない、あの現象
皆さん、今「やらないといけないこと」を先延ばしにしてませんか?例えば、
「大掃除をする」
「学校の課題に取り掛かる」
「転職活動する」
「仕事の成果をまとめて報告する」などなど…

ここでメンドウな気持ちが大きいと、
やらない理由を言い訳したり、別のことに取り組んじゃったりして、
結局本当にやらないといけないことはできなかった…
そんな自己嫌悪で締めくくる一日を経験された方、少なくないはずです。
こんな風に、「メンドウなんだけど、やっといた方が自分のためになるんだよなぁ、でもなぁ…」
ってこと、世の中けっこうありふれてますよね。
実はこの「やった方が良いことを、やらない理由を探してやらず、長期的に自分に不利益が生じる」ことは、
「回避」
と呼ばれている現象なんです。
回避って?
「やった方が良いことを、やらない理由を探してやらない」時、その人の心の中でどういう事が起こっているかというと…①やらなきゃいけないことがあるんだけど、そのための行動を起こそうとするとネガティブな感情(億劫さ、不安など)が出てくる。
②ネガティブ感情が強まる行動は避けたいから、それっぽい、できない理由を探してやらないことで、短期的には安心する。
③でも、やらなきゃいけないことはできていないから、「行動を起こしたい、でも…」という迷いは解決できていない。長期的には状況はほぼ変わっていない。
というループにはまっています。

やるべきことを考えるとネガティブ感情が出てくるので、つい気をまぎらわせる行動に流れてしまいます。すると一時的にはラクになるため、その行動が習慣化してしまうんですね。
これが「やった方が良いことを、やらない理由を探してやらない」=「回避」です。
そんな状況が続くと、気持ち的にもつらくなりますよね。
もちろん、休息のための先延ばしや優先順位の調整は悪いことではありません。
問題になるのは、不快感を避けるために繰り返す「回避的な先延ばし」です。
回避しているのは物事そのものではなくて…
ちょっとややこしいのですが、実は回避しているのはその物事ではなくて、その物事から生じる自分の「ネガティブな感情」だったりします。「学校の課題に取り掛かる」を例に挙げると、「課題をこなすのが得意な人」は、特に問題なく取り掛かれそうですよね。
でも、「課題をこなすのが苦手な人」はどうでしょう?
いろんな「苦手さ」がありますが、例えば
「レポートの文章が全然思い浮かばなくて億劫なんだよなぁ。」とか、
「どこから手を付ければ良いのか分からなくてなんか不安…。」
と思う人もいるかもしれません。あるいは、
「やるからには一発OKをもらえるよう完璧に仕上げないと…あ~できる気がしない!」
なんて思ってお手上げ状態、という場合もよくあるかもしれません。
「得意な人」と比べると、課題にまつわるイメージと、そこから生じる感情がだいぶ違ってきますね。
あなたはどのタイプでしょうか?
イメージや考えが浮かぶと、それに応じて感情が生じるのは人間として自然な反応です。
ネガティブなイメージが湧いたら、当然ネガティブな感情が出てきます。
ネガティブな感情は、人間にとってすぐに無くしたい感情です。そのため、どうにかして早めに解消しようとします。
そうすると人は、ネガティブな感情が出てくる物事を巧妙に避けます。
つまり、回避している人は、「その物事にまつわる自分の不快な感情を紛らわせたり、落ち着かせるために回避をしている」、ということです。
「先延ばし」をやめるヒント
やらないといけないことを先延ばしにして「回避」してしまうことへの対処としては、「最初の一歩目をとても簡単にする」という工夫が挙げられます。複雑な作業に取り組む最初の一歩目って、「これを全部やらないといけない」、「全て完璧にこなさなければならない」と思うことも多いんです。
「少しずつやれば良い」とよく言われますが、頭ではわかっても気持ち的になかなか取り組めなかったり、どこから手を付ければ良いのかすぐにはわからなかったりもします。
そのため大事なのは、より具体的に丁寧にやるべきことを細分化して「今はこれをやればいい」という意識にもっていくことです。
冒頭の例でしたら、
「大掃除はまず最初の10分でできることをやる」
「レポート課題はまず文書作成ソフトでタイトルだけ入力してみる」
「転職活動は、まず1つだけ転職サイトに登録する」
「まず仕事の成果を列挙する」
などが最初の一歩目として良いかもしれません。
そうしたら、
「この勢いで換気扇も掃除するか」
「目次も作っちゃうか」
「プロフィールも作っちゃうか」
「文章も書いちゃうか」
と思える可能性もあります。
意外と一歩目を踏み出すだけでも違う景色が見えてくるもので、そうすると、二歩目三歩目が楽になります。
「取り掛かるまではおっくうだったけど、やってみたら意外と気合が入って夜になるまでやっちゃった」みたいなこと、皆さんも経験したことがあるかもしれませんが、それに似ていますね。

まとめ
今回は、自分にとってプラスになりそうな行動を回避に負けずにやれるようになるにはどうしたらいいか、というお話を、一般的な心理学の考え方に基づいて説明しました。今が頑張り時の方は、一緒にがんばっていきましょう。もし、先延ばしのクセが続いてしんどいと感じる方は、お一人で抱え込まずにサポートを活用するのも一つの手です。
なおこの内容は、当院「リワークデイケア」プログラム内でも扱っています。
休職者を対象にしたリハビリテーションプログラムです。
https://hsp.ncnp.go.jp/clinical/program_detail.php?@uid=Kawb6TDFf2Hbe1gZ
また、物事の段取りを考えて取り組むことに難しさを感じられている場合は、当院臨床心理部のプログラム「P-SKIP」で、その内容を扱っています。
https://hsp.ncnp.go.jp/clinical/program_detail.php?@uid=huh3zVSXwMK6tD2D
もしご興味あれば、リンクからご覧ください。
(参加者数によってはお申し込みをお待ちいただくことがございます。)