薬物依存症専門外来
薬物依存症とは
薬物依存症はれっきとした医学的障害です。決して意志が弱いからでも反省が足りないからでもありません。そして精神医学的障害である以上、いくら説教や叱責、あるいは罰を与えても、それでよくなるものではないのです。なぜなら、薬物を使ったことのある脳は、いつまでも薬物の快感を記憶していて、自分でも気づかないうちに、その人の思考や感情を支配してしまうからです。必要なのは罰ではなく治療です。
薬物依存症の症状
- ーその薬物を初めて使った当初に比べて、使用量や頻度が明らかに増えている
- ーその薬物を使うことによって逮捕されたり、仕事や日常生活に支障をきたしたり、健康上の問題が生じたりしている
- ーその薬物の使用をやめよう、あるいは、減らそうと何度も決意したり、努力したりしているが、失敗をくりかえしている
薬物依存症専門外来の特色
わが国の薬物関連障害の医学的治療は、もっぱら幻覚や妄想といった中毒性精神病の治療に終始し、より根本的な問題である薬物依存症に対する治療はほとんど顧みられないできました。そのような現状を変えるために、現在私たちは、薬物依存症に対する専門的治療プログラムの開発に取り組んでおります。当外来では、その治療プログラムを提供させていただきます。薬物依存症専門外来における治療の中心は、原則として集団認知行動療法です。したがって、集団認知行動療法を希望されない方、あるいは、同治療法が向かない方は、当外来の治療対象とはならない可能性があることを、あらかじめご了承ください。
薬物依存症専門外来の診療内容
薬物依存症に対する集団精神療法(SMARPP): 患者さん数名~十数名程度のグループを対象として、週に1回、2時間程度の集団認知行動療法による治療を行います。この治療は、1クール26回(ワークブックを用いた治療が24回、薬物依存の回復者によるグループセッションが2回)から構成されており、週1回通った場合、半年でひとまずの治療が終了します。上記の集団認知行動療法の補足として、個人精神療法、ならびに、薬物関連精神障害に対する薬物療法を行います。
対象の方
- 覚せい剤や大麻などの規制薬物を「やめたい」と考えている方、あるいは、自分自身ではまだ迷いがあるが、周囲からは「やめた方がよい」といわれている方。
処方薬や市販薬を治療以外の目的から不適切に用いていて、自分では「やめなければいけない」と思っている方、あるいは、自分自身ではまだ迷いがあるが、周囲からは「やめた方がよい」といわれている方。
薬物の後遺症による幻覚(幻聴・幻視)や妄想、気分の変動や興奮性といった症状が、日常生活に支障があるほど重篤ではなく、予約外の緊急対応や入院治療を必要としない方(私たちが提供できるのはあくまでも週1回の外来治療です。したがって、週1回の外来治療では薬物をやめていくことが困難と考えられる病状の患者さま、あるいは、中毒性精神病が重い患者さまの場合には、ご要望に応えることができません)。
なお、当院一般精神科外来、もしくは、他の精神科医療機関に通院中で、すでに精神症状に対する薬物療法などの治療を受けている患者さんが、「薬物依存症」だけの治療を目的として、当専門外来を利用することも可能です(ただし、その場合には当院における通院治療は、自立支援医療による通院費補助の対象とはならない場合があることをご了承下さい)。
受診申し込み方法と治療の流れ
1.受診申し込み方法当専門外来への受診を希望される方は、下記のメールアドレスにEメールでご連絡を下さい。
| yakubutsuizon@ncnp.go.jp 電話:042-346-1954(平日10:00~16:00) |
その際、メールのなかで以下の1~14の項目について必ずお教えください。
なお、メールで回答していただいた情報に関しては、診療以外の目的で使用することはいっさいありません。
診療上の守秘義務は守られますので、安心して正直にお教えください。
(メールの本文に以下の質問文を「コピー&貼り付け」していただくと便利です)
| 1. 氏名(読みがな): ( ) 性別: 2. 生年月日:西暦 年 月 日生まれ 年齢: 歳 3. 連絡先の電話番号: 4. 現住所: 5. 現在、体の病気で治療を受けている方は、その病名をすべて書いてください: 6. 過去に1回でも乱用したことがある薬物の名前をすべて書いてください: 7. 現在、薬物の乱用が止まっていない方、あるいは止まっているけれど、「また使ってしまうかも」と不安を感じている方の場合、治療を受けたいと思っている乱用薬物の名前をすべて書いてください: 8. 現在、薬物の乱用が止まらないこと以外に、困っている症状(たとえば幻聴や不眠)がありましたら、くわしく書いてください: 9. 現在、薬物の乱用が止まっている方の場合、後遺症として困っている症状(たとえば幻聴や不眠)がありましたら、くわしく書いてください: 10. 現在、お酒は飲まれますか?毎日アルコールを飲んでいる方は「毎日」、毎日ではないがときどき飲む方は「ときどき」、全く飲まない方は「飲まない」とお答えください: 11. これまで精神科で治療を受けたことがある方は、何年(または何歳)頃に、何という名前の病院(またはメンタルクリニック)に通院(または入院)したことがあるか、すべて書き出してください: 12. これまで薬物を乱用した結果(たとえば覚せい剤取締法違反)、逮捕・補導あるいは服役したことはありますか?「ある」または「ない」で答えてください: 13. これまで薬物とは直接関係のないこと(たとえば放火、窃盗)で逮捕・補導あるいは服役したことはありますか?「ある」または「ない」で答えてください: 14. 以上のほかに、何かご質問やご要望などございましたら自由にお書きください: |
2.受診日決定のご連絡
上記のメールを受け取ってから、当専門外来での治療が役に立つ病状であるかどうかを判断させていただいたうえで、2~3日以内(休日・祝日が続く場合にはもう少しお時間をいただく場合があります)に、Eメールにて返信させていただきます。
原則として、その返信のなかで受診予約日についてお知らせさせていただきますが、場合によっては、患者さまの病状についてもう少しくわしくお教えいただくために、追加の質問をさせていただくこともあることを、ご了承いただきたく存じます。また、一度決定した初診日がどうしても都合が悪くなった場合には、予約申し込みをしたメールアドレス(yakubutsuizon@ncnp.go.jp)にEメールにてご連絡ください。
なお、現在、他の精神科医療機関通院中の方の場合には、必ず主治医の先生からの紹介状(診療情報提供書)を持参して受診するようお願いいたします。
3.治療の流れ
まず初診において専門的な病状評価を行い、次回から本格的な治療が行われます。なお、薬物依存症専門外来では、初診担当医と再診担当医が異なります。したがって、受診された方の主治医となるのは再診担当医ということになります。再診日の詳細については、初診時にご説明致しますのでご了承下さい。
担当医師
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 午前 | 松本俊彦 | 松本俊彦 | (初診) 沖田恭治 |
||
| 沖田恭治 | 沖田恭治 | ||||
| 午後 | 松本俊彦 (第1・第3・第5週のみ) |
(初診) 樋口早子 (第1・第3週のみ) |
樋口早子 | 松本俊彦 | (初診) 松本俊彦 |
| 沖田恭治 | (初診) 西村晃萌 |
ご家族の方へ
薬物問題は家族だけの力で解決することがとてもむずかしく、ほうっておくと、気がつかないうちにご本人だけでなく、ご家族の健康にも悪影響を与え、家族全体の元気を奪ってしまいます。気づいた人から一日も早く、家族の外に専門的な助けを求めることをお勧めします。東京都内にある家族のための支援機関をいくつかご紹介します。● 精神保健福祉センター
都内にお住まいの方については、以下の精神保健福祉センターが、薬物などの依存症に関する相談や家族教室を実施しています。それぞれの管轄地域の担当をしていますので、ご相談の前に、各センターのホームページにて担当地区をご確認ください。
※行政機関なので費用はかかりません。また相談することで警察に通報されることはありません。
>東京都立精神保健福祉センター(外部サイト)
>東京都立中部総合精神保健福祉センター(外部サイト)
>東京都立多摩総合精神保健福祉センター(外部サイト)
>● NPO法人八王子ダルク(家族支援事業SMILE)(外部サイト)
依存症回復施設が行っている家族支援で、薬物やアルコール問題の支援経験が豊富な家族支援の専門スタッフが対応しています。有料ですが、土曜日にも支援を行っているので、特に平日のお仕事をお持ちのご家族にお勧めです。
以上の他に、ナラノンや家族会など、当事者家族が運営している自助グループもあります。
お近くの家族支援を探してぜひ足を運んでみてください。
関連リンク
>精神科>薬物依存症センター