遺伝性痙性対麻痺
手足の筋肉への運動の指令は、大脳から錐体路という経路を通り、脊髄で末梢神経に伝えられます。この錐体路の障害で起こる運動麻痺を痙性麻痺と言い、関節や筋が硬くなってしまう特徴があります。また、手足の麻痺のうち、両下肢の麻痺を対麻痺と言います。痙性対麻痺とは、両足の筋肉が硬くこわばり、力が入りにくくなる運動麻痺のことです。
痙性対麻痺は、脳や脊髄に問題がある場合に起こります。脳性麻痺や脊髄損傷、脊髄梗塞は、進行しない痙性対麻痺の原因になります。生まれつきの遺伝子の変化で生じる遺伝性痙性対麻痺では、痙性対麻痺の症状が徐々に進行し筋力低下をきたします。この項目では、主に遺伝性痙性対麻痺について説明します。
遺伝性痙性対麻痺の原因
遺伝性痙性対麻痺は、生まれつきの遺伝子のバリアントが原因で発症すると考えられており、近年の解析技術の進歩により、80個以上の原因遺伝子が報告されています。遺伝形式は顕性(優性)、潜性(劣性)、X連鎖潜性など様々です。
遺伝性痙性対麻痺の検査
症状から遺伝性形成対麻痺を疑い、対麻痺を起こす他の疾患がないか、合併症がないかどうか検査をして調べます。必要に応じて頭部や脊髄のMRI、神経伝導速度検査、血液検査、髄液検査などが行われます。
遺伝性痙性対麻痺の治療
現状では根治的な治療はなく、痙縮に対する対症療法やリハビリテーションをはじめとする対症療法が中心です。新しい治療開発に発展すべく、原因遺伝子の研究が進んでいます。
症状
小児期早期から成人に至るまで幅広い年齢で発症します。足の痙性麻痺のため、足に力が入りにくくなり、関節が固くなり、症状は徐々に進行していきます。診察では、腱反射が亢進し、病的反射がみられます。症状の程度は、歩きにくさを感じるものの自立歩行可能な方から、移動には車椅子が必要という方まで様々です。
純粋型と複合型
痙性対麻痺のみを症状がみられる純粋型と、その他の症状も合併する複合型に大きく分かれます。
純粋型の遺伝性形成対麻痺では、痙性対麻痺のみ見られますが、排尿の障害や振動などの感覚障害も伴うこともあります。複合型では、痙性対麻痺の症状に加えて、感覚の異常などの末梢神経神経障害、手の震え、ぎこちない動きなどの小脳症状、てんかん、知的発達症、認知症、難聴、視力低下などを合併することがあります。
対象の外来診療科目
脳神経小児科一般外来
【WEB申込可・医療機関申込可】
当院脳神経小児科では、小児期に発症する神経症状を主訴とする患者さんはすべて対象となります。
特にてんかん診療、神経筋疾患診療は専門施設として豊富な経験があり、チームで診療を行っております。
発達の遅れや行動の問題などでは、臨床心理士と連携して評価いたします(療育・心理カウンセリングは行っておりません)。